2024.10.25

ソーラーカー特有のエネルギーマネジメントとは? 名古屋工業大学

ソーラーカーレースの大きな特徴の一つとして、エネルギーマネジメント(エネマネ)の存在が挙げられます。ソーラーカーレースでは、限られたエネルギーを活用してどれだけ速く、あるいはどれだけ長い距離を走行できるかを競うため、競技時間内で適切な配分でエネルギーを消費していくことが重要になります。そこでエネルギーの収支に関わる様々なデータを分析し、レース戦略を立てるのがエネマネという仕事です。ここでは、エネマネについて簡単に解説していきます。

 

エネマネにおける一番の目標は、競技終了の時点でバッテリー残量をゼロにすることです。それを達成するために、まずは利用できるエネルギーの総量を把握します。レースで利用できるエネルギーには、事前にバッテリーに充電しておいた電力量と、レース中にソーラーパネルによって発電された電力量があります。このうち、前者はほぼ定数ですが、後者は日照条件によって大きく変化します。そのため、天気予報や地形、時間帯などを考慮して発電量を予測します。利用できるエネルギーの総量を把握できたら、次に走行によるエネルギーの消費量を把握します。

エネルギーの消費には、運動エネルギーと位置エネルギーへの変換分に加え、空気抵抗や転がり抵抗による損失を考慮する必要があります。転がり抵抗に関しては、事前の走行テストで求めた転がり抵抗係数に、車重をかけることで求めることができます。空気抵抗に関しては、同様に求めたCd値に、空気密度、前方投影面積、車速を掛け合わせて求めます。これらの損失を考慮することで、どれくらいの速度で走行すると、どれくらいのエネルギーが消費されるのかということを予測することができます。以上のようにして、利用できるエネルギーの総量とエネルギー消費量の速度依存性を把握できたら、どのくらいの平均速度で走行すれば、バッテリー残量をゼロにすることができるのかということが分かります。しかし、パネルによる発電量は時間によって変化するため、常に一定の速度で走行すればよいというわけではなく、発電量に合わせて速度を調整する必要がある場合もあります。

ここまでで解説してきた内容は、基本的にはレース前に行うことになります。実際のレースでは、様々な条件が複雑に変化するため、事前に予測した通りにはいかないことが多いです。そのため、レース中にはソーラーカーに搭載したロガーを用いて発電量や消費量を測定し、そのデータをピットに送っています。そしてエネマネ担当者がそのデータを分析し、状況に合わせてレース戦略を修正していきます。

以上のように、エネマネはソーラーカー全般に関わる様々な知識が必要となるため、とても大変な仕事です。しかし、ソーラーカーレースにおいて最も重要なエネルギーの管理を担うため、非常に重要でやりがいがあります。

 

 

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