- 2025.05.14
富山大学フォーミュラ紹介 ~ドライブドレイン班~

こんにちは!富山大学フォーミュラプロジェクト、ドライブトレイン班(以下DT班)リーダーの栗田泰暉です!今日はTUFのDT班について紹介します!
この記事の目次
TUFにおけるDT班のお仕事
今年度プロジェクトより、昨年度までのパワートレイン班から独立し、DT班として3年生1人、1年生2人でマシンの駆動系部分の開発を行っています。主な設計の流れとしては、使用するパワートレインのスペック(出力・トルク等)を考慮しながら、目標達成可能なマシンに必要な最高速度や最大トルクを算出します。TUFでは例年チェーンドライブ方式を採用しているので、算出した数値からそれに見合った速比(減速比)を設定・検証を行って、使用する遊星歯車減速機やドライブ・ドリブンスプロケットの歯数の組み合わせを決定します。それを受けて、その遊星歯車減速機に適応したギアボックスと、大きなトルクを受けて発生するチェーンの張力に耐えうるLSDマウントを設計していくというのが、TUFでのDT班のお仕事です。
遊星歯車減速機
ギアケースとモーターアセンブリ
設計する部品(ギアケース編)
主に設計していく部品は大きく分けて、遊星歯車減速機を格納するギアケースと、LSDマウントの2つになります。先ほどから何度も「遊星歯車減速機」というワードが出てきますが、一体何をしている部品なのか…と思う方もおられるかと思いますので、少しだけ説明させていただきます。学生フォーミュラのICVマシンは、ほとんどがオートバイのエンジンを搭載しています。オートバイのエンジンは一般的な自動車のエンジンと異なり、トランスミッションまで一体構造となっています。学生フォーミュラでチェーンドライブを採用しているチームでは、エンジン内のトランスミッションである程度減速された回転数を、さらにドライブ・ドリブンスプロケットでもう一段階減速させているチームが多くみられます。しかしEVの場合、モーターにトランスミッションは搭載されておらず、直接出力される回転を車軸に伝えるとなると、圧倒的にトルクが足りず、走り出すこともままならないでしょう。そこでオートバイのエンジンでいうところのトランスミッションの役割を「遊星歯車減速機」が担っています。チェーンドライブのみで1段階の減速で済ませればいいじゃないか!と思う方もいるかもしれませんが(私もそう思ったことがあります)、その場合ドリブンスプロケットがとても大きくなってしまいます。自動車としては非常に小型である学生フォーミュラマシンのパッケージングに、非常に適合しにくくなってしまうのです
設計する部品(LSDマウント編)
モーターからの回転が伝わっているとき、チェーンに大きな張力がかかります。その張力に負けないようにLSDとスプロケットを支えるのがLSDマウントの役割です。※私自身でLSDマウントの設計をした経験がなく、浅はかな知識で書いているので温かい気持ちで読んでいただけますと幸いです。
学生フォーミュラチームの間では、LSDマウントの固定方法は様々です。TUFでは最も(私的には)一般的であるリアバルクヘッドに溶接した角パイプと締結する方法を採用しています。固定個所からLSDの中心との位置関係を決めて、それを基準としてマウントの形状を考えていきます。3DCADで表現してそれにチェーンの張力の反力をかける解析を行うという作業をひたすら繰り返して、最適な形に近づけていきます。ほとんどのチームが同じやり方をしているかもしれませんが、その解析の結果を受けて部材を肉抜きしてまた解析をかけるという手順を加えることによって、より軽いLSDマウントを作りこんでいくというのがTUFでのやり方です。
LSDマウント
アセンブリ状態のLSDマウント
EV初年度プロジェクト(昨年度プロジェクト)の体験談
実はTUFがEVで参戦しているのは、昨年度プロジェクト(2024大会)からなのです。全種目完走という目標を掲げ大会に挑みましたが、エンデュランスの途中でリタイアという結果に終わってしまいました。全種目完走とはなりませんでしたが、大会で走ることが出来た点においては大きな成果であると評価しています。EV参戦初年度で、大会で走ることが出来たことを受けると、とても順調であったかのように思われる方もいるかもしれませんが、実はとても大変でした、、、。DT班目線からの昨年度プロジェクトの話を少しさせていただこうと思います。
昨年度プロジェクトでは「DT班」は存在していませんでした。「EVパワートレイン班」の中の「駆動系」という名前で、当時学部2年の私と1つ下の後輩と二人で活動していました。LSDマウント設計のノウハウは持っていたため、そこまで苦労はしませんでしたが、遊星歯車減速機のギアボックスの開発に非常に苦労しました。とにかく、何をどうしたらいいのか何一つとしてわからない。完成するまでのビジョンが全く見えない日が続きました。そういったときは、名古屋工業大学さんや静岡大学さんをはじめとする、EVで参戦している先輩大学さんに連絡を取り、ノウハウを1から教えていただいたり、使っている部品について教えていただいたり、とにかく何でも聞きまくっていました。ありがたいことに、とても協力的にいろいろ教えていただくことが出来て何とか形に持っていくことが出来ました。順調かと思われた矢先、遊星歯車減速機を支援して頂いている「マテックス株式会社」様に設計を確認していただけるということで、最終設計会議の前に確認して頂きました。私の経歴としては、もともとエンジン系に携わりたく、学部1年次は排気菅と燃調セッティングを担当しておりました。そのため基本的な機械設計の知識が皆無だったこともあり、2か月ほどかかった設計がまた0からやり直しになってしまいました。一昨年に総合6位を獲得したチームと言えど、全く新しい部品に対する知識を持っている人間がおらず、誰も頼れず基礎から勉強する日々が続きました。これに関しては自分だけでなく、EV系の部品を担当したメンバー全員、とても苦しい状況でした。頂いたアドバイスを参考にして、何とか形にすることが出来、それを製作して頂ける企業様との話し合いも順調に進み、やっと完成が見えてきた!と思ったとたんに、前に立ちはだかったのは「資金の壁」でした。他大学の先輩が「学生フォーミュラはアイドル活動である。」という話をされていたのがとても心に残っています。大人の方々は頑張る学生たちに対して快く協力してくれる優しい方が多いと思います。とはいえ、スポンサーシップを獲得するのは難しいですよね…。特に「お金」の協力を得ることは非常に難しいと思います。ここで躓いてしまうとシェイクダウンの日程に響いてくるという、とても厳しい状況でした。そんな状況をどう切り抜けたかというと、SNSでの募集でした。学生フォーミュラ界隈でも滅多に、いや全くといって良いほど見たことがない、「お金をご支援頂ける企業様、いませんか!!」という投稿を作成し、SNSで拡散しました(みっともない…)。とてもありがたいことに複数の企業の方から連絡を頂き、なんとか資金を集めることが出来、部品を形にすることが出来ました。先ほどのような投稿をすることにとても迷いがありました。正直みっともないというか、受け手の立場から考えると非常に軽率であると思いましたが、「学生フォーミュラ」の「学生」という言葉の強みとして、「失敗が許されること」だと思っており、思い切って行動に移せたことが非常によかったと評価しています。(ご協力頂きました企業の方々、誠にありがとうございました。)
と、このような感じでなんとかギアボックスを形にすることが出来、結果として大会でも不具合を起こすことがなかった駆動系を開発することが出来ました。0を1にする経験が出来た非常にやりがいのある1年間だったと思います。辞めたくなるほど苦しい時期も幾度となくありましたが、チームメンバーだけでなく他大学の方、地元の企業の方など、学生フォーミュラに関わる全ての人たちの優しさや頼りがいを大いに感じることができた、自分の人生にとっても得るものが大きい1年でした。
今年度プロジェクトでのチャレンジ
何度も述べているように、昨年度がEV初チャレンジであったため、旧DT班の設計思想としては、とにかく「壊れないこと」を追い求めていました。壊れない物が出来たことは非常によかったですが、かなり重たい物が出来てしまいました。それを受けて今年度プロジェクトでは、大幅な軽量化に挑戦します。学生フォーミュラ界隈ではまだ前例が無いと思われる内部構造になっていますが、ここでネタバレというのは惜しいので、これを読んで興味を持ってくれた学F民は大会で富山大学のピットへ遊びに来てくださいね(^^) 3DCAD上での重量測定では、すでに約2kgの軽量化に成功しています(前年度比)。今年のTUF、ご期待ください。
年度のギアボックス
※イメージ
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