2024.01.31

学生フォーミュラ参戦プロジェクト グランデルフィーノ “Grandelfino”2024 年度 プロジェクト企画書

はじめに

私たち「京都工芸繊維大学 学生フォーミュラ参戦プロジェクト“Grandelfino”(グランデルフィーノ)」は学生フォーミュラ大会への参加を目的とし、2005 年に発足した団体です。 2023 年度の活動は新型コロナウイルスの影響による制限がほとんど無くなり、様々な開発事項に各々が存分に熱中することができました。動的審査が現地で開催され、スポンサー様にご支援いただきながら製作したマシンで 2022 年度に引き続き現地走行が叶いました。新型コロナウイルスによって数年間大会が開催されなかった影響が残っており、大会経験が 1度しかないメンバーでのチーム運営となってしまった
中でも、チームメンバーの尽力によって全種目出走することができ、総合優勝することができました。
動的審査の結果はスキッドパッド 1 位アクセラレーション 9 位オートクロス 1 位
エンデュランス 1 位となり、動的審査総合でも 1 位を獲得することができました。
静的審査については過去の大会の結果やフィードバックを分析し、得点に繋げるために議論を重ねました。また、多くのメンバーで綿密な打ち合わせをすることでメンバー同士の認識を共通化させ、一つの目的に向かって各メンバーのリソースを最大限引き出すことを意識しました。結果的には 2022 年度から若干順位を落としてしまった種目もあるものの、好成績を残すことができました。
引き続きチームの大目標である「大会史上初の 4 連覇」を達成するため、2024 年度はより一層綿密なコミュニケーションを取ることで認識を統一し、メンバー全員で同じ目標、マシンコンセプトに向けて足並みをそろえて邁進してまいります。
本企画書は、2024 年度学生フォーミュラ大会に向けての弊チームの活動方針、活動計画を記すものです。ご多忙かとは存じますが、お手すきの際にご一読頂ければ幸いです。

⦁ Formula-SAE について

Formula-SAE とは

Formula SAE とは、教室の中だけでは優秀なエンジニアが育たないことにいち早く気づいたアメリカの技術者が『ものづくりによる実践的な学生教育プログラム』として、Society of Automotive Engineers, Inc。(SAE)の主催により、1982 年より開催されている自動車競技会です。その目的は、フォーミュラカーの設計・製作を通して学生に仮想企業を運営させることで、実践的な知識を身に付けさせることにあります。
Formula-SAE の現状

Figure 1. 参加チーム世界地図

学生が設計製作したフォーミュラスタイルのレーシングカー(F1 と同じオープンホイールのレイアウト、ホイールベース 1525mm 以上、排気量 710cc 以下のエンジン、ホイールは 8インチ以上等が標準設計要項)を持ち寄り、車両設計の目的や求める性能、製作に要した費用などを総合的に審査し、学生のものづくりの力を競い合うという競技です。

当初は参加校 6 校、参加人数 40 人と非常に小さな規模で行なわれていましたが、現在では
アメリカだけでなく、ドイツ、オーストラリア、ブラジルなど 17 か国で開催され、世界中で同じレギュレーションの下、600 校を超える大学が参加しています。現在では EV(電気自動車)クラスも開催され、ICV(ガソリン自動車)と同様目覚ましい記録が樹立されております。
更に先進的なドイツ大会などではローカルルールで自動運転や数年後には EV クラスのみのコンペティション化など自動車業界の変化に合わせ、より高度で先進的なコンペティションへと変化を遂げています。

学生フォーミュラ日本大会

学生フォーミュラ日本大会(英名:Student Formula Japan Competition)は、(公社)自動車技術会(JSAE)の主催により開催されている Formula SAE の日本大会です。第 1 回大会が 2003年に 17 チームで開催されて以降その規模は年々拡大し、2022 年度の第 20 回大会では EVクラスチームを含む計 63 チームがエントリーしました。2022 年度は新型コロナウイルスの影響により海外チームは不参加となりましたが、例年では海外チームも多く出場しておりその多くはアジアを中心としたチームであるため、本大会はアジア大会と呼べる規模にまで成長しています。
また、以下の図(Figure 2)に日本大会における各種目の概要と Figure 3~6 に 2023 年度における動的審査各種目のコース図を示します。(引用 自動車技術会)
2024 年度からは大会開催場所及びコース図が変更となります。

Figure 2.大会種目の概要

Figure 3. アクセラレーションコース図

Figure 4. スキッドパッドコース図

Figure 5. オートクロスコース図

Figure 6. エンデュランスコース図

⦁ “Grandelfino(グランデルフィーノ)”について

グランデルフィーノとは

グランデルフィーノは京都工芸繊維大学の学生フォーミュラ参戦プロジェクトチームです。設計・製作はもちろんのこと、部品の調達やスポンサー企業獲得のための渉外活動まで自分 たちの力で行っています。フォーミュラカーを製作する過程で、ものづくりに必要となる力を学び、自らの能力を高めることを目標として日々活動しています。
2005 年のチーム創立時から「小型・軽量」というチームコンセプトをもとにマシンの構想を練ってきました。そのことが功を奏し、マシンの総合的な性能を試されるオートクロスやエンデュランスにおいて上位の成績を獲得しておりました。2011 年度から 2018 年度までの 8 年間では全動的種目完走を続け 3 回の総合優勝、2 回の総合準優勝、計 46 タイトルの受賞などを獲得し、日本では初の7年連続入賞(6 位以内)を果たし、強豪校と呼ばれるまでにチームを成長させることができました。しかしながら、2019 年度大会では競技中の車両トラブルによってリタイアとなってしまい、連続入賞記録が途絶えてしまうこととなりました。
2020 年度からはこの雪辱をはたし、もう一度強豪校として返り咲くために上智大学が過去
に達成した3連覇の記録を超える大会史上初となる「総合 4 連覇」をチームの大目標としました。しかし、従来の単気筒エンジンではこれまで以上の出力向上が難しかったこと、更なる開発に伴う車両の信頼性への懸念が残ったことからチーム初となる 2 気筒エンジンへの載せ替えに挑戦しました。そこで、チーム目標を達成するべく、新エンジンを最大限生かす開発を複数年度に渡って行う「3 カ年計画」に着手しました。3 カ年計画 2 年目である 2022 年度には総合優勝を達成することができ、そこからチームの大目標である総合 4 連覇を目指す「4 連覇計画」を始動しました。新計画初年度である 2023 年度は無事優勝することができ、2024 年度は 2 年目としてカーボンモノコックの搭載を行い、3 連覇目を目指します

歴代マシンの紹介

GDF-01
第 5 回学生フォーミュラ大会に参戦する車両 GDF-02 を製作する上で必要な基礎知識を習得するために作られた試作機です。

Figure 7. GDF-01

GDF-02
総合順位 52 位
2007 年度の第 5 回大会参戦マシンです。「小型・軽量・低慣性マス」をコンセプトとして設計されています。マシン重量 190kg と新規参加校の中で最も軽量に仕上げることができました。参加校の半数以上が完走できないエンデュランス競技を完走しました。

Figure 8. GDF-02

GDF-03
総合 34 位、オートクロス 13 位
2008 年度の第 6 回大会参戦マシンとして製作されました。GDF-02 のコンセプトである小型軽量を踏襲しつつ、ドライバビリティの向上を目指したマシンとなっています。結果からも分かるように、GDF-02 と比べ、格段に性能の向上に成功しています。重量も 185kg と GDF- 02 に比べ、軽量にすることに成功しました。

Figure 9. GDF-03

GDF-04
総合 13 位、スキッドパッド 4 位

Figure 10. GDF-04

2009 年度の第 7 回大会参戦マシンです。今までのコンセプトに「正常深化・信頼性」をプラスした考えに基づいて製作しました。GDF-03 と比較してもマシン重量が約 20kg 軽い 165kg と大会参戦チームの中でも特に軽量なマシンとなっています。随所にカーボン素材が使用され軽量化に繋がっています。

GDF-05
総合 30 位、デザイン審査 15 位、オートクロス 12 位

Figure 11. GDF-05

2010 年度の第 8 回大会参戦マシンです。これまでのマシンの小型軽量の完成形を目指し「~ Answer~」というコンセプトで製作しました。GDF-04 に引き続き複合材料を有効活用しカーボン素材で軽量化に繋げ、新たに衝撃吸収性の高いアラミド繊維をドライバーコックピットの周りに配置し安全性を考慮したマシンは大会でも高い評価を頂きました。

・GDF-06
総合 12 位、プレゼンテーション審査 3 位

Figure 12. GDF-06

2011 年度の第 9 回大会参戦マシンです。GDF-05 の持っていたポテンシャルを活かし、マシンとしての完成度を高めるという考えの下、「洗練」というコンセプトを掲げ製作しました。小規模アップデートで収めたため 4 月初旬にシェイクダウンをすることができ、大会までに 250km もの走行距離を稼ぐことができました。また、重量は 160kg とこれまでのマシンの中で最も軽量で、総合順位 12 位の成績を収めることができました。

・GDF-07
総合 1 位、エンデュランス 1 位、オートクロス 1 位、スキッドパッド 2 位、コスト審査 2 位
2012 年度の第 10 回大会参戦マシンです。これまでのマシンコンセプトは抽象的であったため、「低速コーナー脱出速度の追求」という具体的な指針をコンセプトに設定しました。弊チーム最速の 3 月 30 日にシェイクダウンを迎えられたことにより、質・量ともに高い走行が可能となりました。2012 年度は合計約 300km という長距離のテスト走行を行ったため、マシンの問題解決、アップデートに繋がり、大会へのマシン準備が順当に行えた結果、総合優勝を成し遂げることができました。

Figure 13. GDF-07

・GDF-08
総合 5 位、エンデュランス 3 位、スキッドパッド 4 位
2013 年度の第 11 回大会参戦マシンです。GDF-07 はエースドライバーに合わせたマシンとなっていたため、その他のドライバーにとっては操縦しづらいマシンになっていました。そこで、GDF-08 では全てのドライバーにとって扱いやすいマシンを目指し、「ドライバビリティの追求」というコンセプトを掲げ製作しました。大会直前の試走会までセットを煮詰めつつドライバーとマシンのすり合わせを行い、動的最速を目指しました。

Figure 14. GDF-08

・GDF-09
総合 5 位、動的種目 3 位、エンデュランス 4 位、燃費 4 位
2014 年度の第 12 回大会参戦マシンです。日本大会において、オートクロス・エンデュランスのコースはコーナーが多数存在する為、「テクニカル区間最速」をコンセプトと設定し、直線よりコーナリングでの速さを追求しました。Drexler LSD の搭載やリアブレーキのアウトボード化、AVON タイヤの使用など、様々な新技術を取り入れ、マシンスペックのボトムアップを行いました。


Figure 15. GDF-09

・GDF-10
総合 2 位、スキッドパッド 2 位、エンデュランス 5 位
2015 年度の第 13 回大会参戦マシンです。「中高速コーナーにおけるコーナリング姿勢の追求」を掲げ、マシンの接地性・回頭性の改善、軽量化を目指しました。ホイールベースの延長、サイド吸気の採用など、進歩的な設計に挑戦しました。また前年度車両 GDF-09 に取り付けた様々なセンサから得られたデータを元に、定量的な開発にも取り組みました。

Figure 16. GDF-10

・GDF-11
総合 1 位、スキッドパッド 1 位、エンデュランス 2 位、ベストラップ賞 2 位、オートクロス
4 位
2016 年度の第 14 回大会参戦マシンです。2016 年度は「コーナリング挙動の追求」を車両コンセプトとして、コーナーの進入・旋回・脱出と、それぞれの過渡域におけるより良い車両運動を求めて開発を行いました。フレームのレイアウト変更やアルミ一体削り出しリアバルクヘッド、エンジンのボアアップ、エアロデバイスの初搭載など、新規の開発に次々挑戦し、4 年間同じレイアウトである現在の周回コースにてチーム過去最速のタイムを記録しました。

Figure 17. GDF-11

・GDF-12
総合 1 位、ベストラップ賞 1 位、オートクロス 1 位、エンデュランス 2 位、スキッドパッド
4 位
2017 年度の第 15 回大会参戦マシンです。2017 年度は「Fast Lightweight Sports」を車両コンセプトとして、GDF-11 で培った高い運動性能を保ちつつマシン全体の軽量化、周回コースに効果的なエアロデバイス、過去最高出力のパワートレイン開発の 3 点を重点的に行いました。

Figure 18. GDF-12
・GDF-13
総合 2 位、ベストラップ賞 1 位、オートクロス 1 位、エンデュランス 2 位、スキッドパッド
2 位
2018 年度の第 16 回大会参戦マシンです。2018 年度は「確かな速さへの挑戦」を車両コンセ プトとして、どのドライバーがどこで走っても高い運動性能を発揮できることを目指しました。タイヤサイズやダンパーの変更、ディフューザーの導入、パワーを維持しながらの軽量化、フレーム剛性の等配分化などにより、大会では欧州強豪校にも勝る速さを見せました。

Figure 19. GDF-13
・GDF-14
総合 17 位、オートクロス 3 位、コスト賞 2 位、スキッドパッド 3 位
2019 年度は「軽量化」を掲げシャシ・フレーム班とパワートレイン班の合計で目標値通りの 15kg の軽量化に成功しました。(2018 年度比)
弊チーム初のセンターロック機構マグネシウムホイールの搭載および、エアロデバイス等 の重心から離れているパーツの軽量化を積極的に行いました。また、吸気レイアウトの変更、革新的な排気パーツを搭載するなど様々な技術開発に取り組みました。

・GDF-15
新型コロナウイルスの影響により大会中止

Figure 21. GDF-15

2020 年度は 2019 年度での雪辱を果たすべく、様々な改革に挑みました。数年に渡るチームのビジョンを掲げ、それを基に長期目標・中間目標、及びそれを実現するためのマイルストーンを設定しました。2020 年度はその第一歩としてチーム史上初のエンジン載せ換えに挑戦しました。

・GDF-16
新型コロナウイルスの影響により動的審査中止。総合順位 6 位(静的審査のみ)
2021 年度は新エンジンのドライサンプ化を含む中期開発である「3 カ年計画」を掲げ開発に取り組みました。2021 年度には「出力確保とベース開発」のマシンコンセプトのもと、新エンジン搭載での走行に加えドライサンプ化システムの開発を行い、更にチーム初となる自作ブレーキキャリパーの開発を行いました。

Figure 22. GDF-16
・GDF-17
総合 1 位、デザイン審査 1 位、コスト審査 1 位、プレゼン審査 1 位、スキッドパッド 1 位
アクセラレーション 2 位、オートクロス 1 位、 エンデュランス 1 位、ベストエアロ賞 2 位
ジャンプアップ賞 1 位、ベストエルゴノミクス賞 3 位
2022 年度は新エンジン搭載後の中期計画である「3ヵ年計画」の2年目として「旋回性能への挑戦と更なる出力向上」というマシンコンセプトを掲げました。前年度より開発していたエンジンのドライサンプ化システムを初搭載し、低重心化を達成しました。

Figure 23. GDF-17
・GDF-18
総合 1 位、デザイン審査 4 位、コスト審査 1 位、プレゼン審査 4 位、スキッドパッド 1 位
アクセラレーション 9 位、オートクロス 1 位、 エンデュランス 1 位
2023 年度は史上初の 4 連覇を目指す 4 連覇計画の 1 年目として「旋回性能への更なる挑戦
~低速コーナー~」というコンセプトを掲げました。スチールパイプ車体の最終年度であるため、これまでの集大成として車両パッケージの成熟を目指しました。

Figure 24. GDF-18

3.2023 年度大会の分析

2023 年度大会について

Table 1.大会結果

車検
2023 年度はかろうじて車検を突破することができました。大会開催直前にレギュレーション違反が
見つかり対応に追われてしまいました。この反省を 2024 年度に引き継ぎ、万全の体制で大会に
臨めるようにいたします。

静的審査
2023 年度は 2022 年度に引き続きオンライン審査にて実施されました。
・デザイン審査
デザイン審査については、2022 年度に変更された提出書類のフォーマットに対応し、先輩や OB・OG の方々に意見をもらうことで、質の高い書類を作成することができました。車両挙動や各パートについて理解を深めることで、発表当日の質疑応答でも自信を持って堂々と回答することができ、デザインファイナル進出へと繋がりました。
・コスト審査
コスト審査については、「正確性の向上」を目標に取り組みました。主に資料作成にあたったのは 2 年生のメンバーでしたが、このメンバーは入部時に新入部員講習の一環としてミニカー講習を実施し、そこでコスト審査の書類作成の練習を行っていたため、実際のコスト審査の取り組みにおいても即戦力として活躍できました。また、過去に資料作成の統括を行った上級生によるチェックを繰り返し行うことで、ミスの少ない書類を完成することができました。一方で書類の提出段階において、進捗管理に抜けがあり期限内にすべての資料を完成させることができず、遅延提出となってしまいました。この反省については 2024 年度に引継ぎ、期限を守りながらも完全な状態で提出できるようにして参ります。

・プレゼンテーション審査
プレゼンテーション審査については、4 位を獲得することができました。2022 年度 1 位を獲得できた要因を分析し、この審査について割く人的・時間的リソースを多くしたこと、そしてメンバー全員で認識の共有を徹底したことで筋道だったプレゼンができたと感じております。プレゼンテーションの概要をまとめた SPD を記入するメンバー、プレゼンテーション資料を作成するメンバー、実際に発表するメンバーで認識の齟齬が生じないように全員で議論する時間を多く設け、意識統一を徹底することで質を向上させ、2023 年度も高評価を頂くことができました。しかし、利益計算の詰めが甘く、1 位は逃してしまいました。

動的審査
2022 年度同様、現地にて動的審査が開催されました。

・スケジュール
スケジュールにつきましては 4 月のシェイクダウンをはじめとし、試験走行の機会を最大限多く設けることで、目標の試験走行距離である 400km を達成することができ、最終走行距離は 432km となりました。これによって他チームより多くの実測データ収集し、車両セッティングを合わせ込めたことが、好成績に繋がったと考えております。一方で、走行距離が伸びたことにより部品に疲労が蓄積し、車両各部のトラブルへの対処に追われることとなりました。

・大会中
静的審査で好成績を収めることができ、既に他チームに対して得点でアドバンテージがあったので、動的審査では「コースレコードを残す」という事を目標に戦略を立てました。各日程で種目ごとの他チームの得点を分析、優勝のために必要な目標タイムの算出も欠かしませんでした。

⦁ 最終目標に対する振り返り~4 連覇計画に向けて~

弊チームは 2021 年度より「史上初の 4 連覇」を最終目標とする「3 ヵ年計画」を掲げ、車
両開発に取り組んで参りました。弊チームは 2020 年度にエンジンを変更し、優勝奪還を達成し得る車両パッケージングの実現を 3 年間かけて段階的に行うために「3 ヵ年計画」を始動いたしました。
3 カ年計画 2 年目である 2022 年度に計画よりも 1 年早く、総合優勝することができました。この結果を受け、3 ヵ年計画を再考し、2023 年度より最終目標に向けて新たなロードマップである4連覇計画を打ち出しました。この 4 連覇計画では、最終目標を達成するべく 2025年度までを見据えた情勢分析から各年度での目標タイム・必要な開発事項などについて検討しました。

4連覇計画最終目標

Table 2. 最終目標得点

新たなロードマップである4連覇計画における最終目標は、引き続き「日本の頂点に立ち継続的に勝ち続けることこそが強豪校としての工繊大の在り方である」という考えのもとに変わらず「史上初の4連覇」とします。しかし、コロナ禍による不十分なノウハウ伝達や EVチームの成長といった新たな情勢変化に対応しつつ勝ち続けるためには改めて長期的な情勢予測が必要であると考えました。
そこで、過去数年間の日本大会の優勝校の点数より、総合優勝するために必要な目標得点を
850 点としました。
アクセラレーションではEV がモーターの出力特性において有利であり、スキッドパッドでも四輪のトルクベクタリングの制御が可能な EV が有利であると分析しました。しかし、エンデュランス・オートクロスについては排熱などの耐久性に関する問題を抱えやすい EV に対して ICV が有利であると考えました。また、実際の過去の海外大会の結果から、今後 3 年間の日本大会では EV のタイム向上に関わらず、アクセラレーションとスキッドパッドにおいてICV で 1 位を獲得する車両性能を有していれば総合優勝を獲得できると判断しました。したがって、最終目標としてオートクロス・エンデュランスで1位、スキッドパッド・アクセラレーションでICV1位を目指します。
静的審査については過去大会の経験からチーム内で培われてきたノウハウを活かしながら、各種目でコミュニケーションを綿密にとりメンバー間での認識共有を徹底することで高得点獲得を目指します。
以上のように静的審査・動的審査ともに高得点を獲得することで総合優勝を勝ち取ります

4連覇計画各年度目標

設定した最終目標達成に向けた各年度での目標について議論しました。まず、オートクロス・アクセラレーション・スキッドパッドのタイムを伸ばすためには軽量化が必要であり、エンデュランスの点数を伸ばすためには高い信頼性が担保される必要があると考えました。このことから 4 連覇達成に向けて優れた軽量性と高いねじり剛性を持つカーボンモノコックの開発・実車搭載を決定いたしました。このカーボンモノコック搭載については実車搭載前の準備期間・実車搭載後のブラッシュアップが必要であると考えたため4連覇計画の2年目での搭載を目指して開発を行っております。
下図(Figure 25)のような流れの下にカーボンモノコックを主軸とした新パッケージのマシンで 4 連覇を目指して参ります。

Figure 25. 4 連覇計画

・4連覇計画初年度(2023 年度)
2022 年度大会の動的審査のタイムをコロナ禍以前の水準と比較すると優勝するためには不十分であると考えたため、総合的な運動性能の向上を目指しました。従来の車両の運動性能の向上について4連覇計画の最終目標をエンデュランス・オートクロス1位と設定したことから、オートクロスのタイムを運動性能の指標とし、車両開発を行いました。
加えて、来年度搭載予定のカーボンモノコックに関わるカーボンの型の設計・製作モノコックの試作を行いました。

・4連覇計画 2 年目(2024 年度)
カーボンモノコックを実車搭載して大会に出場する初めての年になります。前年度よりカーボンモノコックの制作を行い、大会用車両とは別に車両を作成します。その車両で試走を行うことで信頼性の向上を目指します。スペースフレームからの転換点の年となり、従来のスペースフレームのパーツレイアウトを変更することができるので開発の自由度がさらに広がりパーツレイアウトを一新することで大きなタイム向上が見込めます。また、翌年搭載を目標として電子スロットルなどの新規開発を始めることで総合的な車両完成度の向上を目指します。

・4連覇計画 3 年目(2025 年度)
3 年目ではモノコック搭載 2 年目として新パッケージマシンの熟成の年となります。シャシパーツのさらなる高剛性化や前述の開発を引き続き進めることで信頼性向上・マシン軽量化を進めます。

⦁ 2024 年度目標

2024 年度目標について

Table 3. 2024 年度目標

2023 年度大会では、EV チームの目覚ましい活躍があり、アクセラレーションにおいては弊チームと50 点以上の差をつけられました。したがって、結果としては総合優勝を達成しましたが、ギリギリの勝利だったと言えます。このことから 2024 年度ではアクセラレーションでの得点が難しく、その分をオートクロスやエンデュランスで得点する必要があると考えました。目標得点決定後、これを達成できる目標タイムについて検討いたしました。2024年度の目標タイムはコロナ禍による大会全体のレベルの
低下が起こる前の 2015~2019 年及び、2023 年のトップタイムの平均に基づいて設定しました。
2024 年度大会ではコースレイアウトが変更されます。弊チームはコースに関わらず走行の基本である旋回性能に重きをおいているため、この影響は軽微と考えております。また、実際にコースウォークを行った結果、勾配などについても把握することができましたので、今後対応を進めて参ります。
また、静的審査につきましては、過去大会の出場経験により培われたノウハウと、審査員の 方々に頂いたフィードバックにより更なる改善を目指します。コスト審査については正確さを徹底し、製作費用の計上ミスを無くすことで減点の抑制を図ります。プレゼンテーショ ン審査については昨今の好成績を収めた大会の経験からノウハウを得ることができました。具体的には、長い時間をかけてデータの収集、アイデアの考案を行い、話し合いを数多く行うことで認識の共有の徹底を行います。デザイン審査については、実際の車両開発の V プロセスにおける評価段階に注力することで設計の妥当性を向上させ、高得点を目指します。

2024 年度マシンコンセプトについて

2024 年度のマシンコンセプトは以下のように決定いたしました。
低速コーナーにおける進入と脱出
最終目標であるエンデュランス・オートクロス満点による総合優勝を達成するべく、2023 年度大会における弊チームのタイムと他校のタイムを比較しました。その結果、特にオートクロスの低速コーナー(16~17 コーナー)においてタイムの伸び代が見られました。Figure 26にセクション分けの詳細を示します。

Figure 26. 各セクションの詳細
Table 4 に各セクションにおいて弊チームが他チームと比較して何%タイム差があるかを示します。負にいくほど弊チームが速くなっております。

Table 4. オートクロスにおける他チームとのタイム比較の結果

2022 年度、2023 年度についてはオートクロスにおける定常旋回の性能に注力して開発を進めて参りましたが、2024 年度は低速コーナーにおけるコーナーの進入・脱出に注目してタイム向上を目指して参ります。なお、コーナーにおける「進入・定常・脱出」という分類は下図(Figure 27)のように行いました。

Figure 27. コーナー区分


他大学とのセクションタイムと、車両のセンサやログデータの分析を行った結果、下図
(Figure 28)の四角の部分を低速コーナーと定義し、このコーナーのタイム向上に注力します。

Figure 28. 低速コーナー

車両開発における評価については主に4月からの試験走行期に 2023 年度大会のコースを実際に走行し、目標セクションタイムの達成度によって評価します。そして、進入・脱出性能向上にむけて応答性・操作性向上を主軸に開発を進めて参ります。
応答性向上のためには高ねじり剛性、軽量化が必要です。ねじり剛性の向上はカーボンモノコックフレームの導入や設計目標の転換により達成を目指します。カーボンモノコックは 2022 年 10 月より開発を進めており、現在試験段階での走行を終えることができました。
2024 年度は試験の結果を分析し、積層方法の変更や形状の最適化などにより、モノコックの改善を行って参ります。軽量化については目標タイムを達成することができる車両重量を簡易的な旋回シミュレーションによって算出しました。これを受け、目標車両重量を 2023年度車両から 4kg 軽量化する 205kg と設定し、パワートレイン班・シャシ班ともにパーツの軽量化に取り組んで参ります。また、カーボンアームの導入などの材料置換や、トポロジー最適化により達成を目指します。
また、操作性の向上についてはトルクの谷の解消によるコーナー脱出時の回転数域のトルク曲線の見直しや点火カット、電子シフターの導入によるシフト操作の簡略化などに取り組みます。
そして、動的審査前に行われる車検について、2023 年度は危うくも通過することができましたが大きな課題が残されました。大会直前にレギュレーション違反が発覚し、対応するために車重が増加してしまいました。車検を通過することは大会出場のための前提条件であり、これを突破することができないと現地で走行するは叶いません。今後も常勝するためには車検を確実に通過できる車両であることは必須であり弊チームにとっても課題の一つであると認識しているため、レギュレーションの把握を徹底し、2024 年度大会では他チームに先駆け最速での車検突破を目指します。

チーム運営について

スケジュール

弊チームでは設計・製作スケジュールの立案に際し、大会期間から逆算しながら目標の試験走行距離 350km を達成するため、シェイクダウンの日程を早期に設定しました。そこから設計・製作などに関わる期限を決定し、それらを基に細かなスケジューリングを行っていきます。2024 年度もチーム内に受け継がれたスケジューリング方式に沿って目的を達成するべく適切な計画を立てて参ります。特に、2024 年度はカーボンモノコック実装初年度なので、例年以上に予定管理に注意が必要だと考えております。また、計画に遅れが生じる前に定期的に計画の見直しを行い無理のないプロジェクト進行を行って参ります。最も特徴的なのは車両開発における構想→設計→製作→評価→構想…という大まかな流れの中で弊チームが最も重要視している評価段階(試験走行など)を充実させるために車両の早期完成及び試験走行を重視したスケジューリングを行いました。以下の図(Figure 29)に 2024 年度プロジェクトの年間予定を示します。

Figure 29. 年間スケジュール

チーム体制について

弊チームは大会に参加している他チームと比べてメンバー数がトップクラスとなる 58 名のメンバーを抱えています。多くのメンバーのそれぞれが役割を持って活動に参加できるようにするため、弊チームでは以下の 3 つの取り組みを行っております。
⦁ チーム体制
2024 年度のチーム組織図(Figure 30)を以下に示します。2024 年度のチーム体制と致しましては、チームの統括としてプロジェクトリーダー、統括補佐として副リーダー、予算管理として会計担当、車両の統括としてテクニカルリーダー、車両走行の統括としてトラックエンジニアを配置致します。また、パワートレイン班及びシャシ班にパートリーダーを設けて各リーダーに統括される形でパーツ担当者が車両の設計に携わります。
また、テクニカルリーダーやパートリーダーが主として弊チームの強みである厚い層の OB や上級生とも密に連絡を取り、現役生だけでは為し得ることができない高度な開発を目指します。

Figure 30. 2024 年度組織図

弊チームでは、9 月の大会後に代替わりを行い、2 年生が幹部の代となってチームを運営し、1 年生と共に現役メンバーとして活動します。実際に車両設計・製作、静的書類作成に携わるのはこの現役メンバーですが、既に現役を退いたメンバーもアドバイザーという形で活動に携わり、設計や書類作成の補助、下級生の教育などを行います。

⦁ 進捗管理システム
毎週一度チームメンバーが集まる全体会で、チームの現状や目標に対しての進捗を確認します。シャシパーツ・パワートレインパーツ・エアロパーツに分かれて各パーツの週ごとの進捗報告を行い、各パートリーダーがそれらを統括・進捗管理を行います。そしてプロジェクトリーダーに各パートリーダーが進捗を報告してスケジュールを適宜修正していきます。
⦁ シンクタンクの設立
これまで弊チームでは幹部の代を退いたチームメンバーが活動から遠ざかってしまうということが問題視されていました。そこで、こうしたチームメンバーを有効的に活用する方法として、2023 年度よりチーム内にシンクタンクを設立しました。このシンクタンクではチームでの活動や大学での研究生活を経て、知見を広げた上級生が数年後を見据えた先行開発に取り組むことで、チームとメンバーのそれぞれが持続的に成長していくことを目的としています。
また、上級生が自発的に開発に取り組める環境づくりとして、シンクタンク内で発案した開発に対して開発プロセスをフローチャート化することでアイデアを形にしやすくなり、幹部陣による審議の場を設けることで、開発内容の妥当性等を吟味し、チームへの貢献度に応じて予算の分配等を行っています。
上記のような取り組みによって 58 名のメンバー全員で強豪校であり続けられるチームを目指していきます
2024 年度実装するカーボンモノコックはこのシンクタンクにて開発することにより、通年の車両製作と同時並行で行うことができ、高い水準での実現を目指すことができました。
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いつもご支援・ご協力くださっているスポンサーの方々、誠にありがとうございます。弊チームの活動はスポンサーの皆様があってこその活動です。今後もこのことを忘れず皆様のご期待に添えるよう部員一同精進して参ります。スポンサーの皆様には年間を通して企画書・月次報告書・大会報告書・統括報告書を送付させて頂きます。また、ご要望の際はチームメンバーに向けた企業説明会、弊チーム車両の展示や人材派遣など、可能な限りご支援に対する恩返しをさせていただきたいと思います。
終わりに

Figure 31. 2023 年度大会

本企画書を最後までご覧頂き誠にありがとうございました。2023 年度は新型コロナウイルスの影響もなくなり、コロナ禍前と同等の環境で車両製作・試験走行を行うことができました。また、対面にて多くのスポンサーの皆様と交流させていただくことができ、多くのご支援・ご声援を賜ることができました。大会現地でも多くのスポンサーの皆様とご挨拶させていただくことができ、たくさんの方に私達の活動が支えられているのだと感じました。支えてくださる皆様の期待に最大限お応えし、4 連覇に向けて引き続きチーム一丸となって精進して参りますので、今後ともご支援・ご声援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

線1左

過去大会ランキング

線1右

学生F
自動車部
エコラン

    2023 Ene-1 SUZUKA Challenge
    ソーラーカーレース鈴鹿2023

  • 1
    木本工作所
  • 2
    東郷アヒルエコパレーシング
  • 3
    長野県飯田OIDE長姫高校原動機部A
  • 4
    長野県飯田OIDE長姫高校原動機部B
  • 5
    nn-techエコランチーム

    2023年度 全日本学生
    ジムカーナ選手権大会結果

  • 1
    早稲田大学
  • 2
    慶應義塾大学
  • 3
    日本大学
  • 4
    関西学院大学
  • 5
    千葉工業大学
  • 6
    立教大学

    学生フォーミュラ 日本大会
    2023 開催結果

  • 1
    京都工芸繊維大学
  • 2
    日本自動車大学校
  • 3
    岐阜大学

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