ソーラーカーの空力について２　名古屋工業大学

2025.02.21

ソーラーカーの空力について２　名古屋工業大学

空気力学は、ソーラーカーレースにおいて重要です。その理由は２点あります。

１つ目は最高速度に影響があるからです。空気抵抗によって後ろ向きの力を受けます。これが車体に作用する進行方向の力の合計を制限し、最高速度も低下させてしまいます。

２つ目は走れる距離を左右するからです。ソーラーカーレースでは、太陽光パネルでの発電量に対してどれだけの距離を走れるかが大切です。空気抵抗が大きくなってしまうと、その分だけ走行に必要な力やエネルギーが大きくなり発電量当たりの走行距離が短くなってしまいます。

空気抵抗と車体形状は大きな関係があります。下図は空気抵抗を小さくすること目指し

２０１９年に製作されたソーラーカーHorizon Aceです。

図1　空気抵抗が小さいHorizon Ace

空気力学で空気抵抗を示す指標に抗力や抗力係数があります。抗力は、物体の周囲に空気のような流体があるときに物体が受ける進行方向と反対の方向の力です。抗力は車体まわりの圧力の分布によって発生した力のうち水平方向成分の力とも言えます。これらの関係を図２で示します。

図2　物体が流体から受ける力と抗力の関係^（1）

空気力学では物体は静止、周囲の空気が車体の進行方向と反対向きに流れているとして考えることが多いです。抗力は以下の式の様に表すことができます。

CDは抗力係数、ρは空気の密度、U∞は周囲の空気の流速、は車体の全面投影面積（車体を前から見た時の車体の面積）です。空気の密度は気温や大気圧によって決定されます。車体形状の設計では、抗力係数や全面投影面積を小さくし抗力の低下を狙います。この他にも、空気抵抗の要因として車体周りの空気の渦や乱れも存在します。そのため空気力学の観点では、車体形状を流線形の様な空気が車体に沿って滑らかに流れる形状が理想的です。

ソーラーカーは地上を走る車の中で空気抵抗が最も小さい車と言われることもあります。市販されている乗用車の空気抵抗が0.3程であるのに対し、ソーラーカーは0.1を切るものも存在します。

空気力学は、実際の車や飛行機でも重要で検証の際には、模型を使用した実験やコンピュータでのシミュレーションによって周囲の圧力分布や空気の流れを観察します。

参考文献

（1）中林功一、伊藤基之、鬼頭修己、流体力学の基礎（2）、1993年、15p、コロナ社発行